東京地方裁判所 昭和54年(ワ)70540号・昭54年(ワ)4919号 判決
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【判旨】
1 被告竹田、藤田彰、米本和嘉、染谷、鈴木ら六、七名は、昭和五三年二月ころ、東京都台東区東上野三丁目二二番二号所在の上吉ビル四階の事務室を借り受け、貸金業を営んでいたが、事務室の賃料、光熱費、事務員の給料等はすべて全員で分担し、いずれも株式会社萬盛(ただし、未登記)という同一の商号を使用し、右商号を記載した看板を事務室の外に掲げ、各自の名刺にも株式会社萬盛あるいは株式会社萬盛・営業部という肩書を印刷して用いていた。被告竹田らが金員を貸し渡す場合には、計算書と題する書面を作成してこれを借主に交付していたが、その書面には作成名義人として「株式会社萬盛」という文字が印刷され、その下に所在地と電話番号が印刷され、そこに「株式会社萬盛代表取締役印」という丸印を押印し、額面欄に貸付金額を、期日欄に貸付日と返済日を、日数欄に貸付日から返済日までの日数を、利率欄に利率を、割引料欄に天引利息額を、差引御支払額欄に利息天引後の交付金額をそれぞれ記載して、同書面と交付金額を借主に交付し、借主からは貸付金額を額面とする小切手ないし約束手形を受領していた。借主が返済日に貸付金額を返済した場合には、受領していた小切手ないし約束手形を竹田らから借主に返還し、借主が返済日に貸付金額を返済できないか、あるいは一部しか返済できない場合には、返済日を延期し、被告竹田らにおいて、延期した返済日までの利息を借主から受領し、前記貸付の際に借主に交付した計算書と題する書面と同一様式の書面の額面欄、期日欄、日数欄、利率欄、割引料欄にそれぞれ記載し、差引御支払額欄には貸付残元本から利息を控除した金額を鉛筆で記載して借主に交付した(したがつて、現実に貸し付ける場合と返済日を延期して利息を受領する場合の計算書と題する書面の記載上の相違は、差引御支払額欄の記載が鉛筆書かどうかという点にある。)。
2 前記被告竹田ら六、七名は、昭和五三年三月末ころから、前記上吉ビル四階の事務室を引き払い、東京都千代田区外神田三丁目一四番一九号所在の平和観光開発ビル九階の事務室を借り受けてそこへ移り、貸金業を引き続き営んだが、事務室の賃料、光熱費、事務員の給料等はすべて全員で分担し、いずれも株式会社鳳陽物産(ただし未登記)という同一の商号を使用し、右商号を記載した看板を事務室の外に掲げ、各自の名刺にも株式会社鳳陽物産。営業部という肩書を印刷して用いていた。被告竹田らが金員を貸し渡す場合には、株式会社萬盛(ただし、未登記)の商号を使用していた時とほぼ同一様式の計算書と題する書面を借主に交付したが、その書面には作成名義人として「株式会社鳳陽物産」という文字が印刷され、その下に所在地と電話番号が印刷され、そこに「株式会社鳳陽物産代表取締役印」という丸印を押印した。各欄の記載方法は、株式会社萬盛(ただし、未登記)の商号を使用していた時と同様であり、借主が返済日に貸付金額を返済する場合に貸付の際預つていた小切手ないし約束手形を借主に返還する取扱いも、借主が返済日に貸付金額を返済できなくて利息を支払い返済日を延期する場合の取扱いも、株式会社萬盛(ただし、未登記)の商号を使用していた時と同様であつた。なお、計算書と題する書面の差引御支払額欄の下には、株式会社萬盛(ただし、未登記)の商号を使用していた時のものも、株式会社鳳陽物産(ただし、未登記)の商号を使用するようになつた時のものも、いずれも「弊社は必ずこの計算書を発行していますから大切に御保存下さい」という文言が印刷されていた。
3 原告会社は、昭和五三年二月八日から同年三月一三日までの間、被告竹田、米本和嘉、藤田彰らから、株式会社萬盛名義の計算書の交付を受けて、別表(一)①ないし⑤の「元本」欄記載の金員を「日数」欄記載の日数で借り受けたが、その際「天引」欄記載の金員を利息として天引され、「受領」欄記載の金員を受領し、「計算元本」欄記載の番号の元本につき「利息支払」欄記載の金員を利息として支払つて「日数」欄記載の日数だけ返済日を延期し、「計算元本」欄記載の番号の元本につき「元本支払」欄記載の金員を支払つて元本を弁済した(原告会社は、貸付を受ける際、その振出にかかる小切手を交付し、元本弁済の際に、右小切手の返還を受け、領収証や計算書は元本弁済の際には受領していない。)。
4 原告会社は、昭和五三年三月二七日から昭和五四年一月一六日までの間、被告竹田、米本和嘉、藤田彰らから、株式会社鳳陽物産名義の計算書の交付を受けて、別表(一)⑥ないしの「元本」欄記載の金員を「日数」欄記載の日数で借り受けたが、その際「天引」欄記載の金員を利息として天引され、「受領」欄記載の金員を受領し、「計算元本」欄記載の番号の元本につき「利息支払」欄記載の金員を利息として支払つて「日数」欄記載の日数だけ返済日を延期し、「計算元本」欄記載の番号の元本につき「元本支払」欄記載の金員を支払つて元本を弁済した(原告会社は、貸付を受ける際、その振出にかかる小切手を交付し、元本弁済の際に、右小切手の返還を受け、領収証や計算書は元本弁済の際には受領していない。)。
なお、原告会社は、別表(一)の「元本」欄記載の金員を借り受ける際、被告竹田、米本和嘉、藤田彰らから、貸主が同人ら各個人である旨の説明は一切受けていない。
5 被告会社は、昭和五四年一月一九日に設立登記されたが、その本店所在地は、被告竹田らが株式会社鳳陽物産(ただし、未登記)の商号を用いて貸金業を営んでいた事務室の所在地である東京都千代田区外神田三丁目一四番一〇号であり、商号も株式会社鳳陽物産という同一商号を登記し、代表取締役には藤田彰が就任し、貸金業を営んでいる。原告会社は、被告会社に対し、昭和五四年二月一三日、原告会社が被告会社設立前に株式会社鳳陽物産(ただし、未登記)名義の計算書の交付を受けて借り受けていた貸付残元金一四一〇万円の内金一一〇万円を弁済し、残元金一三〇〇万円に対する昭和五四年二月一三日から同年三月一二日までの日歩二〇銭の割合による利息金七二万八〇〇〇円を支払い、被告会社から計算書(甲第八号証の四九)の交付を受けた。右計算書は、株式会社鳳陽物産(ただし、未登記)名義の計算書(甲第八号証の五ないし四八)と比較した場合、基本的には同一様式といえるが、たとえば、新たに係印欄を設けたり、作成、日付欄を計算書という表題の下にもつてくるなど若干の変更を加え、角型の社名印を押捺している。
以上の事実が認められる。<反証排斥略>。被告竹田は、別表(一)①ないし⑭の元本欄記載の金員は同被告が個人で原告会社に貸し付けたものであり、そのほかに昭和五三年五月一三日には金三七五万円を個人で原告会社に貸し付け、同月一九日現在で原告会社に対する貸付元本は合計金二〇〇〇万円であり、その後、元本の弁済や利息の支払を受けていないので右貸付元本金二〇〇〇万円を残したまま被告竹田個人と原告会社との取引は終了した旨主張し、被告竹田は、本人尋問の際、右主張に副う供述をしている。そして、<証拠>によれば、被告竹田が昭和五三年五月一五日金二〇〇〇万円を原告会社に貸し渡した旨の金銭消費貸借契約公正証書が同年六月一九日東京法務局所属公証人山口一夫により作成されていることが認められ、<証拠>によれば、昭和五三年五月一三日付で株式会社鳳陽物産名義の原告会社に対する金三七五万円の貸付に関する計算書が作成されていることが認められ、さらに、請求原因(八)(1)の事実(被告竹田のため、別紙登記目録記載(四)ないし(一三)の各登記がなされている事実)は当事者間に争いがない。しかしながら、(1) <証拠>を総合すれば、別表(一)⑪ないし⑭の「元本」欄記載の金員合計金一二四〇万円はいずれも返済日が昭和五三年五月二七日であり、別表(一)⑦の「元本」欄記載の金一三五万円の残元本金八五万円の延期後の返済日が同月二六日であつたところ、原告会社は同月二五日株式会社鳳陽物産名義の計算書の交付を受けて金二五〇万円を借り受け(別表(一)⑰)、右金員に対する同日から同年六月一二日までの日歩二〇銭の割合による利息金九万五〇〇〇円、前記金八五万円に対する同年五月二六日から同年六月一二日までの日歩二八銭の割合による利息金四万二八四〇円、前記金一二四〇万円に対する同年五月二七日から同年六月一二日までの日歩二〇銭の割合による利息金四二万一六〇〇円、以上利息合計金五五万九四四〇円を支払つて金一九四万〇五六〇円を受領し、同年六月一二日には金一〇三〇万円を弁済し、右金二五〇万円、金八五万円、金一二四〇万円に同年五月三一日借り受けた金九五万円の合計金一六七〇万円から右弁済した金一〇三〇万円を控除した残額金六四〇万円に対する同年六月一二日から同年七月一一日までの日歩二〇銭の割合(月六パーセントの割合)による利息金三八万四〇〇〇円を同年六月一二日に支払つていることが認められること(したがつて、同年五月一九日の前後を通して、原告会社との金銭貸借取引は一貫性、継続性をもつて行われていること)、(2) <証拠>によれば、株式会社鳳陽物産名義で原告関根所有の別紙物件目録記載(四)、(五)の不動産に関する登記済権利証の預り証が作成され、株式会社鳳陽物産の社名印の下に米本の印影が押印されていることが認められること、(3) <証拠>によれば、乙第三号証の計算書の様式は、被告会社設立後に使用している計算書の様式(甲第八号証の四九)とまつたく同一であることが認められる。したがつて、被告竹田の前記主張に副う被告竹田本人の供述は採用することができず、前記公正証書の存在や前記被告竹田のための各登記の事実によつても、前記認定を覆えすに足りず、他にこれを覆えすに足りる証拠はない。
前記認定の事実に基づいて考えるのに、被告竹田、藤田彰、米本和嘉ら六、七名の者は、昭和五三年二月ころ、株式会社萬盛(ただし、未登記)という商号を持つ一種の民法上の組合を構成していたものと解するのが相当であり、同年三月末ころ、右商号を株式会社鳳陽物産(ただし、未登記)に変更し、右民法上の組合が株式会社萬盛あるいは株式会社鳳陽物産という商号を用いて原告会社と昭和五三年二月八日から昭和五四年一月一六日までの間別表(一)①ないしの「元本」「天引」「受領」「利息支払」「元本支払」各欄記載の金銭貸借取引を継続して行つたものと解するのが相当である。そして、被告会社設立後の昭和五四年二月一三日、被告会社は、原告会社から、原告会社が右株式会社鳳陽物産という商号の民法上の組合と行つた継続的金銭貸借取引に基づく貸付残元金一四一〇万円の内金一一〇万円の弁済を受け、残元金一三〇〇万円に対する同日から同年三月一二日までの利息金七二万八〇〇〇円を受領することにより、右株式会社鳳陽物産という商号の民法上の組合から商号及び営業を譲り受けた被告会社が、原告会社に対する債権債務関係も譲り受け承継したものと解すべきである。
(上田豊三)